SESを辞めたい人へ|自社開発に移るための、現実的なルート
「常駐先が変わるたびに、また一から人間関係を作り直す」
「単価は上がってるらしいのに、自分の給料は変わらない」
「このまま何年やっても、スキルが積み上がる気がしない」
そう感じているなら、その感覚は正しいです。
そして、それはあなたの能力や努力の問題ではありません。
SESという働き方の仕組みから、そうなりやすい構造があります。
この記事では、なぜそうなるのかを説明したうえで、どうやって抜け出すかを書きます。
先に断っておくと、SESを一方的に悪いものとして扱うつもりはありません。
未経験からエンジニアになる入口としては、現実的な選択肢です。
実際、そこから経験を積んで次に進む人は大勢います。
問題は、そこに何年いるかです。
先に結論
・給料が上がらないのは、人月単価というビジネスの仕組みのため
・抜け出すなら、実務経験1〜3年目が動きやすい時期です
・自社開発が正解とは限りません。受託や社内SEも選択肢です
・「自社開発」と書いてある求人が、実は違うことがあります
なぜ、単価が上がっても給料は上がらないのか

ここを理解すると、動くべきかどうかの判断がつきます。
SESは、エンジニアの稼働時間に対して料金が発生する仕組みです。
「1人月あたりいくら」という形で、常駐先の企業から会社にお金が入ります。
この仕組みには、ひとつ特徴があります。
あなたの生産性が2倍になっても、請求額は基本的に変わりません。
同じ時間働いているなら、請求される金額は同じです。
だから、どれだけ効率よく仕事をしても、会社の売上は増えません。
その結果、給料にも反映されにくくなります。
これは、会社が悪意を持っているという話ではありません。
そういうモデルだから、そうなるという話です。
そして、多重下請けの構造に入っていると、中間の会社がそれぞれマージンを取ります。
元請けが払っている金額と、あなたの給料の差が大きくなるのは、この構造のためです。
つまり、頑張っても給料が上がりにくいのは、能力ではなく仕組みの問題です。
SESで、他にきつくなりやすいところ

給料だけではありません。
よく挙がるものを整理します。
技術や現場を選べない
どの案件に入るかは、会社が決めます。
学びたい技術があっても、そこに配属されるとは限りません。
「テスト工程ばかり2年」「保守運用しか経験していない」——こうなると、次に動きたくても書ける経験が限られます。
常駐先が変わるたびに、関係を作り直す
技術より、ここがきついという人が多くいます。
新しい現場に入るたびに、ルールを覚え、人間関係を作り、また評価をやり直す。
しかも、数ヶ月から数年で、また次の現場です。
「どこにも所属していない感じ」が続くと、消耗していきます。
評価する人と、一緒に働く人が違う
自社の上司は、あなたの働きぶりを直接見ていません。
常駐先の人は評価権を持っていません。
この構造だと、正当に評価されている実感が持ちにくくなります。
責任範囲が曖昧になることがある
自社の指示と、常駐先の指示が食い違うことがあります。
板挟みになって消耗するケースです。
これらは、あなたが感じている違和感が、気のせいではないことの説明です。
それでも、SESには使いどころがあります

バランスを取るために、こちらも書いておきます。
- ① 未経験からの入口として機能する
- 実務経験がない状態で開発職に入るのは難しい。
SESは、その最初の壁を越えるルートになります。
- 実務経験がない状態で開発職に入るのは難しい。
- ② いろいろな現場を見られる
- 金融、公共、Webサービス、業務システム——短期間で複数の業界を経験できるのは、他ではなかなかできません。
- ③ 会社によって差が大きい
- 一括りに語られがちですが、研修が充実している会社、案件を選べる会社、給与への還元がある会社も存在します。
だから、「SESだから辞めるべき」ではありません。
判断すべきなのは、今いる会社と、今の案件の中身です。
動くべきかを判断する、5つの質問

次の質問に答えてみてください。
- ① 直近1年で、書ける経験が増えましたか
- 職務経歴書に新しく書けることが増えていないなら、時間が資産になっていません。
- ② 案件の希望を、聞いてもらえていますか
- 希望を出しても通らない状態が続いているなら、今後も変わらない可能性があります。
- ③ 給料は、経験年数に応じて上がっていますか
- 上がっていないなら、この先も同じ仕組みが続きます。
- ④ 今の現場で、学べることは残っていますか
- 残っているなら、まだ吸収する価値があります。
なくなっているなら、時間を使っているだけです。
- 残っているなら、まだ吸収する価値があります。
- ⑤ 体調に、影響が出ていませんか
- 眠れない、朝起き上がれない、動悸がする——これが続いているなら、他の4つに関係なく、優先すべきことがあります。
①〜④のうち3つ以上が当てはまるなら、動きどきです。
⑤に当てはまるなら、それは転職より先に対処が必要です。
【本題】何年目で動くのが現実的か

タイミングの話をします。
実務1年未満
まだ早い可能性があります。
理由は単純で、「経験者」として扱われる最低ラインが、だいたい1年前後だからです。1年未満だと、未経験に近い扱いになり、選べる求人が限られます。
ただし、次の場合は例外です。
- 現場で何も学べていない(雑務や単純作業ばかり)
- 心身に影響が出ている
- 明らかに条件が説明と違った
この場合は、1年を待つ意味がありません。
実務1〜3年
ここが、一番動きやすい時期です。
- 「経験者」として応募できる
- 年齢的にもポテンシャルを見てもらえる
- 前の環境に染まりきっていないと評価されやすい
自社開発や受託に移るなら、この時期が現実的です。
実務3〜5年
まだ十分に動けますが、求められるものが変わります。
「これから育てる」ではなく、「入ってすぐ何ができるか」を見られます。
担当した工程の範囲や、扱える技術の深さが問われます。
逆に言えば、経験が積み上がっていれば条件は良くなります。
実務5年以上
経験の中身次第です。
上流工程やリーダー経験があれば、選択肢は広がります。
逆に、テストや保守だけを5年続けている場合は、書ける経験が限られるため厳しくなることがあります。
その場合は、いきなり自社開発を狙うのではなく、まず開発工程に入れる会社に移るという段階を挟む方法があります。
自社開発だけが、答えではありません

「SESを辞める=自社開発に行く」と考えている方が多いのですが、選択肢は他にもあります。
| 移り先 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 自社開発 | 事業が伸びれば待遇に反映されやすい。 技術を選べる場合がある | 一つのサービスを長く育てたい |
| 受託開発 | 納期に追われるが、技術は自社に蓄積されやすい | いろいろな案件に関わりたい |
| 社内SE(事業会社の情報システム) | 開発より運用・調整が中心。 残業が少ない傾向 | 落ち着いた環境で働きたい |
| SESでも、条件の良い会社 | 案件を選べる、給与還元がある会社もある | 現場を変えることで解決する場合 |
「自社開発が正解」という前提を、一度外してみてください。
残業を減らしたい、生活を安定させたいというのが本音なら、社内SEのほうが合っていることもあります。
開発の最前線にいることと、働きやすいことは別だからです。
逆に、技術を突き詰めたいなら自社開発が向きます。
自分が何を求めているかによります。
【重要】「自社開発」と書いてある求人の見分け方

ここが、この記事でいちばん実用的な部分かもしれません。
求人票に「自社開発」と書いてあっても、実態が違うことがあります。
よくあるのが、こういうケースです。
- 売上の大半が受託や派遣で、自社サービスは一部だけ
- 自社サービスはあるが、配属されるのは受託チーム
- 入社時は自社開発だが、案件次第で客先常駐もある
求人票だけでは、これは分かりません。
だから、確認する必要があります。
面接で聞くべき4つ
① 売上構成比
「売上のうち、自社サービスと受託・SESの比率はどのくらいでしょうか。」
これが一番はっきりします。
答えられない、はぐらかす場合は要注意です。
② 配属先と、その仕事の中身
「入社した場合、どのチームに配属される予定でしょうか。そのチームは何の開発をしていますか。」
会社全体ではなく、自分が入る場所を聞いてください。
③ 客先常駐の可能性
「客先に常駐する可能性はありますか。ある場合、どのくらいの頻度でしょうか。」
「基本的にはありません」ではなく、「あるかないか」をはっきり聞いてください。
④ 技術選定の裁量
「使う技術は、どのように決まりますか。エンジニアから提案する機会はありますか。」
自社開発の魅力のひとつが、ここです。 実際には上から降ってくるだけ、という場合もあります。
この4つを聞いて、具体的に答えられる会社なら、情報として信用できます。
職務経歴書で、SES経験をどう書くか

「SESだから書けることがない」と思っている方が多いのですが、書けます。
案件を並べるだけにしない
やりがちな失敗が、参画した案件を時系列で並べることです。
「◯◯システムの改修(Java、6ヶ月)」が10件並んでいても、読む側には、あなたが何をできる人か伝わりません。
書くべき3つ
- ① 担当した工程の範囲
- 要件定義から入ったのか、詳細設計以降か、テストが中心か。
書かないと、読み手は一番下流だと想定します。
- 要件定義から入ったのか、詳細設計以降か、テストが中心か。
- ② 技術は、習熟度で分ける
- 「Java、Python、JavaScript」と並べるだけでは、どれが主力か分かりません。
継続して書いてきたものと、触った程度のものを分けてください。
面接の技術質問で崩れないためにも、正直に区分するほうが有利です。
- 「Java、Python、JavaScript」と並べるだけでは、どれが主力か分かりません。
- ③ 規模と役割
- チームの人数、担当範囲、後輩の指導、レビューする側だったか。
「リーダーではなかったから書くことがない」と思う方が多いのですが、新人のサポートやコードレビューも実績です。
- チームの人数、担当範囲、後輩の指導、レビューする側だったか。
案件をまとめて書く方法もあります
参画先が多い場合は、こうまとめられます。
株式会社◯◯(2021年4月〜現在)
事業内容:システム開発・技術者派遣【主な担当プロジェクト】
・金融系システムの改修(2022年4月〜2023年3月):詳細設計〜テスト
・業務システムの新規開発(2023年4月〜現在):基本設計〜実装
全部書く必要はありません。
応募先で活きそうなものを、3つ程度に絞ってください。
エージェントを使うと、何が変わるか

この分野では、使う価値がはっきりしています。
理由は、求人票では事業構造が判別しづらいからです。
前に書いた「売上構成比」「配属チーム」「客先常駐の可能性」——これらは、応募前には調べようがありません。
面接で聞けますが、そこまで進んでから「実質SESだった」と分かると、時間の無駄になります。
エージェント経由なら、応募前に確認してもらえます。
- 「この会社の売上構成はどうなっていますか」
- 「この求人は、客先常駐の可能性がありますか」
- 「配属予定のチームは、何を開発していますか」
この確認ができるかどうかで、応募先の質が変わります。
そして、担当者が答えられるかも判断材料になります。
すぐ答えられるなら、その会社を把握しています。
「分かりません」で終わるなら、情報が足りていません。
エンジニア経験者を対象に、選考対策と条件交渉に手をかけるサービスとして、strategy career(明光キャリアパートナーズ運営)があります。
ただし、対象条件がはっきりしているので、先に確認してください。
- エンジニアとしての実務経験がある方が対象です
- (学習中・完全未経験の方は対象外)
- 東京・大阪エリアでの就業を検討している方が前提です
- (地方での就業を希望する場合は対象外)
- SESで実務経験がある方は対象になります
- 一方、地方在住で地元での就職を考えている場合は、別のサービスを検討してください。
※サービスの詳細と、事業構造の見極め方はstrategy careerの評判を検証した記事にまとめています。
辞める前に、確認しておくこと

SESから転職する場合、いくつか特有の注意点があります。
契約期間の途中で辞められるか
- 案件の契約期間中に辞めると、常駐先に影響が出ます。
- 会社から引き止められることがあります。
- ただし、退職の意思表示は労働者の権利です。
- 就業規則で定められた期間(1ヶ月前など)を守れば、辞められないということはありません。
- まずは就業規則を確認してください。
- そのうえで、可能なら案件の区切りに合わせると、話が進みやすくなります。
「損害賠償を請求する」と言われたら
このような発言が出た場合、その会社に円満退職を期待するのは現実的ではありません。
退職を理由とした損害賠償請求が認められるケースは、実際には限定的とされます。
ただし個別の事情によるため、こうした発言があった場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーなど公的な窓口に相談してください。
一人で抱え込まないでください。
在職中に動くほうが有利です
- エンジニアの転職は、在職中に進めるほうが条件面で有利になりやすいです。
- 収入が途切れないため、焦らずに選べます。
- ただし、常駐先での勤務中は、面接の時間が取りにくくなります。
- オンライン面接が可能な会社を優先する、有給を使うなどの調整が必要です。
- エージェントに日程調整を任せられるのは、この点で大きいです。
体調にサインが出ている場合
眠れない、朝起き上がれない、動悸がするといった状態が続いているなら、転職活動より先に心療内科や精神科を受診してください。
エンジニアはデスクワークなので、不調が周りから見えにくく、限界を超えてから気づくことが多い職種です。
「あと少し頑張れば」と思っているうちに、働けなくなることがあります。
面接で聞かれること

SESから移る場合、ほぼ確実に聞かれる質問があります。
準備しておいてください。
「なぜSESを辞めたいのですか」
ここで、常駐先や会社の批判を始めないでください。
「うちでも同じことを言うのでは」と受け取られます。
事実 → 学び → 求めるものの順で答えます。
「複数の現場を経験する中で、短期間で入れ替わる働き方が続いていました。その経験から、一つの製品に長く関わって、改善を積み重ねていく働き方に取り組みたいと考えるようになりました。」
「客先常駐が嫌」が本音でも、こう言い換えられます。
嘘ではなく、同じ事実の別の面です。
「どんな技術を使ってきましたか」
ここは正直に答えてください。
盛ると、この後の技術質問で崩れます。
「継続して使ってきたもの」と「触った程度のもの」を分けて話すのがポイントです。
「業務で継続的に使ってきたのはJavaです。PythonとJavaScriptは、案件の一部で触った程度になります。」
正直に区分するほうが、かえって信頼されます。
「上流工程の経験はありますか」
ない場合は、正直に答えてください。
そのうえで、関わった範囲を具体的に伝えます。
「要件定義から入った経験はありません。詳細設計以降を担当しており、設計書のレビューには参加していました。」
「経験を積みたい」という意欲だけでなく、今できることをはっきりさせるほうが評価されます。
「うちで何をしたいですか」
大きなことを言う必要はありません。
「まずは既存のコードを理解して、任せていただける範囲を広げていきたいです。その先は、設計の段階から関われるようになりたいと考えています。」
足元の話から始めるほうが、現実的に聞こえます。
技術質問への備え
自社開発や受託の面接では、技術的な質問が出ることがあります。
分からないことは、正直に「分かりません」と言ってください。
知ったかぶりをすると、その場で分かります。
そのうえで、「調べて対応します」という姿勢を見せるほうが評価されます。
実務でも、知らないことを調べながら進めるのは普通のことだからです。
よくある質問

Q. SESの経験は、転職で評価されますか?
評価されます。
実務経験があることは、未経験との決定的な違いです。
ただし、担当した工程や技術の深さは問われます。
Q. 何年目で辞めるのがいいですか?
実務1〜3年が動きやすい時期です。
1年未満だと未経験に近い扱いになり、選択肢が限られます。
ただし、学べることがない現場や、体調に影響が出ている場合は例外です。
Q. テストや保守しか経験がありません。
そのままで応募できる求人もあります。
ただ、開発工程を経験したいなら、いきなり自社開発を狙うより、まず開発に入れる会社に移るという段階を挟む方法があります。
Q. 自社開発は、本当に働きやすいですか?
会社によります。
自社開発でも、納期に追われる会社はあります。
事業が安定していない場合、業績の影響を直接受けることもあります。
「自社開発だから良い」とは限りません。
Q. 資格は取っておいたほうがいいですか?
必須ではありませんが、インフラ寄りの職種では評価されやすい傾向があります。
ただし、資格取得を理由に応募を先延ばしにするのは本末転倒です。
Q. 客先常駐が嫌で辞めたいのですが、伝えていいですか?
そのままの言い方は避けてください。
「一つの環境で、腰を据えて開発に取り組みたい」という形に変えると、前向きに聞こえます。
Q. 年収は上がりますか?
上がるとは限りません。
ただし、事業構造が変わることで、その後の昇給の仕組みが変わる可能性があります。
目先の金額より、何年でどうなるかを確認してください。
Q. 転職回数が多いのですが、SESは不利ですか?
SESでの案件の変更は、転職回数にはカウントされません。
会社が同じなら、参画したプロジェクトが複数あるだけです。
職務経歴書には、そのように書いてください。
Q. 契約期間の途中でも辞められますか?
就業規則で定められた期間を守れば、辞められます。
ただし、案件の区切りに合わせるほうが話は進みやすくなります。
揉めそうな場合は労働局に相談してください。
Q. 地方在住ですが、選択肢はありますか?
リモート可の求人が増えている分野ではありますが、雇用の拠点が都市部である場合が多いです。
地方での就業を前提とする場合は、条件を事前に確認してください。
まとめ|構造の問題を、努力で解決しようとしないでください
整理します。
- 給料が上がらないのは、人月単価という仕組みのため。
- 能力の問題ではありません
- 動きやすいのは実務1〜3年目。
- ただし、学べることがない現場なら早めでも構いません
- 自社開発だけが答えではありません。
- 受託、社内SEも選択肢です
- 「自社開発」と書いてある求人が、実は違うことがあります
- 応募前に、売上構成比・配属チーム・客先常駐の可能性を確認してください
- 職務経歴書は、案件を並べるのではなく、工程・技術の習熟度・役割を書く
同じ場所で頑張り続けても、仕組みが変わらなければ結果は変わりません。
「もっと頑張れば評価されるはず」と考えて、何年も過ぎてしまう方がいます。
でも、それは努力の問題ではなく、どこで働くかの問題です。
環境を変えることは、逃げではありません。
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