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転職で年収を上げるには|固定残業代の見抜き方と、年収交渉のタイミング

Kasai
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「転職で年収を上げたい」
そう思って調べていると、交渉のコツや言い回しの例が出てきます。

でも、その前に確認しておくべきことがあります。

それは、提示された金額の中身です。
「年収400万円」と言われても、その中身によって手元に残るお金はまったく違います。

中身を確認しないまま交渉しても、意味がありません。

この記事では、「上げる」より先に「損をしない」という順番で書きます。

そして、自分で言い出しにくい人のために、エージェント経由で進める方法も説明します。

先に結論
・「年収400万円」の中身を、先に見てください。固定残業代がいくら入っているかで、実際に受け取る額は変わります
・残業代そのものは交渉できません。法律で決まっているからです。交渉するのは基本給のほうです
・交渉していいのは、内定が出た後です
・自分で言いにくいなら、エージェントに任せられます

※この記事はちょっと長めです。知りたいことが決まっている方は、目次から飛んでください。


Contents
  1. そもそも「残業代」は、交渉できるのか
  2. まず、提示額の中身を確認する
  3. 年収を比べるときの、計算のしかた
  4. 交渉していいのは、いつか
  5. 交渉が通りやすい場合と、通りにくい場合
  6. 自分で言い出しにくい人へ
  7. 年収が下がる転職を、どう考えるか
  8. 交渉するときの、具体的な伝え方
  9. 交渉が通らなかったときの考え方
  10. 職種別|年収の見方が変わるところ
  11. 在職中のうちに、確認しておくこと
  12. 【詳しく知りたい方へ】固定残業代の、法律の話
  13. よくある質問
  14. まとめ|上げる前に、中身を確かめる
  15. 「お金のことを考えると、余計に不安になる」あなたへ

そもそも「残業代」は、交渉できるのか

最初に、いちばん誤解されやすい点を整理します。
残業代そのものは、交渉するものではありません。

法律(労働基準法37条)で、上乗せの率が決まっているからです。

種類割増率補足
残業(1日8時間・週40時間を超えた分)25%以上1日8時間・週40時間を超えた分
月60時間を超える残業50%以上中小企業も2023年4月から対象
夜10時〜朝5時の勤務25%以上時間外と重なると合計50%以上
休日出勤(法律で決まっている休みの日)35%以上深夜と重なると合計60%以上

※出典:労働基準法37条/厚生労働省

つまり「残業代をもう少し上げてください」という交渉は、成立しません。
法律で決まっている金額を、上げることも下げることもできないからです。

では、何を交渉するのか。

交渉の対象になるのは、基本給と、固定残業代の設定です。

ここを混同したまま「年収を上げたい」と言うと、会社側から「固定残業代を増やして総額を上げる」という回答が返ってくることがあります。

総額は上がりますが、それは「もっと残業してください」という意味でもあります。

だから、こう考えてください。

  • 残業代 = 働いた分だけ、法律に沿って支払われるもの(交渉不可)
  • 基本給 = あなたの評価で決まるもの(交渉可)
  • 固定残業代 = 何時間分を前払いするかの設計(確認すべきもの)

「年収を上げる」の中身が、基本給が上がるのか、残業前提が増えるのかで、まったく意味が違います。


まず、提示額の中身を確認する

同じ「年収400万円」でも、中身が違えば別物です。
具体例で見てみます。

例1:固定残業代が入っている場合

  • A社:年収400万円(月給28万円+賞与) このうち、固定残業代が45時間分・6万円含まれているとします。
    • すると、実際の基本給は22万円です。
    • そして、45時間残業しても、追加の残業代は出ません。
  • B社:年収380万円(月給25万円+賞与) 固定残業代なし。
    • 残業した分は、別途支払われる。

額面ではA社のほうが20万円高い。
でも、月20時間残業する職場だとしたら、B社は残業代が上乗せされます。

年間で見ると、逆転することがあります。

「あります」で終わらせず、実際に計算してみます。

計算が苦手な方は、途中を飛ばして、太字の結論だけ読んでも大丈夫です。

前提:どちらも年間休日120日、1日の所定労働時間8時間、月20時間の残業がある職場だとします。

まず、1時間あたりの賃金を出します。

1ヶ月に働く時間(平均)=(365日 − 年間休日120日)×8時間 ÷ 12ヶ月

  • 【A社】年収400万円/月給28万円(うち固定残業代45時間分・6万円)
    • 基本給部分は22万円。
    • 月20時間の残業をしても、45時間の枠に収まるので追加の支払いはありません。
    • → 年収は400万円のまま。
  • 【B社】年収380万円/月給25万円(固定残業代なし)
    • 1時間あたり:25万円 ÷ 163時間 = 約1,534円
    • 残業したときの時給:1,534円 × 1.25 = 約1,918円
    • 月20時間分:1,918円 × 20時間 = 約38,000円
    • 年間:38,000円 × 12ヶ月 = 約46万円
    • → 年収は約426万円。

額面ではA社が20万円高い。
でも実際に受け取る額は、B社のほうが約26万円多くなります。

差が生まれる理由は単純です。
A社は45時間分を先に払ってしまっているので、20時間しか残業しない人は「使っていない25時間分」を受け取れないまま働くことになるからです。

逆に、月45時間を超えて残業する職場なら、A社にも合理性は出てきます。
超えた分は追加で支払われるからです(後述しますが、これは会社の裁量ではなく義務です)。

つまり、固定残業代を評価するときに見るべきは、金額ではありません。
「その会社の実際の残業時間が、固定残業代の時間数より多いか少ないか」です。

だから、面接で必ずこれを聞いてください。

「この職種の方は、実際に月どのくらい残業されていますか。直近の平均で構いません。」

例2:賞与の「実績」が違う場合

求人票に「賞与年2回」と書いてあっても、実際にいくら出ているかは別の話です。

  • 「賞与年2回(計4ヶ月分)」
    • → これは規定
  • 「昨年度の支給実績は計3.2ヶ月分」
    • → これが実態

聞くべきは実績のほうです。

業績によって変動する会社では、規定どおりに出ていないことがあります。

例3:手当がなくなる場合

前の職場にあった手当が、新しい職場にはないことがあります。

  • 住宅手当(月2万円 → 年24万円)
  • 家族手当
  • 資格手当
  • 通勤手当の上限の違い

基本給が上がっても、手当がなくなって手取りが減るというのは、実際に起きます。


年収を比べるときの、計算のしかた

月給だけで比べないでください。

次の式で、両方の年収を出してから比べます。

年収の見込み = 基本給×12 + 賞与の実績 + 各種手当×12

固定残業代が含まれている場合は、もう一段だけ分解してください。

年収の見込み =(基本給 − 固定残業代)×12 + 固定残業代×12 + 賞与の実績 + 各種手当×12

分ける理由は3つあります。

  • 昇給や賞与は、基本給を基準に計算されることが多い
  • 退職金の算定も、基本給が基礎になることがある
  • 固定残業代の部分は「働いて初めて釣り合う金額」で、確定した給与とは性質が違う

同じ年収400万円でも、基本給が高い会社のほうが、数年後の差は開きます。

そして、確認する項目は5つです。

確認すること聞き方
固定残業代の有無と時間数「固定残業代は含まれていますか。何時間分でしょうか」
超過分の支払い「その時間を超えた分は、別途支払われますか」
賞与の実績「昨年度の賞与は、実際に何ヶ月分支給されましたか」
手当の内容「住宅手当や家族手当などはありますか」
昇給の基準「昇給は年何回で、何を基準に決まりますか」

この5つを確認しておけば、後から「話が違う」となることは、かなり減ります。

そして、内定が出たら労働条件が書かれた書面を必ずもらってください。

口頭で聞いた内容と、書面が一致しているかを確認します。

法律(労働基準法15条)で、会社は働く条件をきちんと示すことが決められています。

給料や勤務時間といった大事な項目は、原則として書面でもらえます(本人が希望すればメールでも構いません)。

2024年4月からは項目が増えて、勤務地や仕事内容が「この先どこまで変わる可能性があるか」も書かれるようになりました。

もらった書面で、次の3点を必ず確認してください。

  • 固定残業代の金額と、それが何時間分か
  • その時間を超えた場合の取り扱い
  • 口頭で合意した内容が、書面に反映されているか

書面が出てこない場合、あるいは口頭の話と書面が違う場合は、その時点で確認してください。入社後に指摘するより、はるかに簡単です。

書面が出てこない場合は、その時点で確認してください。


交渉していいのは、いつか

タイミングを間違えると、うまくいきません。

【面接中】基本的に交渉しない

面接で「いくら欲しいですか」と聞かれることはあります。
このときは、希望を伝えても構いません。

ただし、そこで強く交渉するのは早いです。

会社側は、まだあなたを採用するかどうかを決めていません。
この段階で条件の話ばかりすると、「条件が合わなければ来ない人」という印象になります。

希望額を聞かれたら、こう答えるのが無難です。

「前職では◯◯万円でした。御社の規定に沿った形でご検討いただければと思いますが、可能であれば◯◯万円程度を希望しています。」

規定に沿って、と一言添えるのがポイントです。

一方的な要求ではなく、相談の形になります。

【内定後】ここが交渉のタイミング

内定は、「あなたに来てほしい」という会社の返事です。

この段階なら、会社はあなたに来てほしいと思っています。
だから、話を聞いてもらいやすくなります。

とはいえ、入社を人質にした強い交渉はおすすめしません。
入社後の関係にも影響します。

【承諾後】ここからは難しい

承諾した後の交渉は、基本的にできないと考えてください。
条件に納得したうえで承諾した、と受け取られるからです。

だから、承諾する前に確認と交渉を終えてください。
「とりあえず承諾して、後で交渉しよう」は通用しません。

そして、返事の期限は交渉できます。

「検討したいので、◯日までお時間をいただけますか。」

迷っているなら、この一言を伝えてください。
その場で返事をするよう強く言われたら、それ自体が一つの判断材料です。


交渉が通りやすい場合と、通りにくい場合

すべての会社で交渉できるわけではありません。
先に知っておくと、無駄に消耗せずに済みます。

通りやすい場合

  • 中途採用で、給与テーブルに幅がある会社
  • あなたの経験や資格が、その職種で直接活きる場合
  • 他社からも内定が出ている場合(ただし、これを武器にするのは慎重に)
  • 募集が急いでいる場合

通りにくい場合

  • 新卒と同じ給与テーブルで運用している会社
  • 等級や給料の段階が細かく決まっている会社(公務員に近い仕組みの職場など)
  • 未経験で入る場合(実績がないので、上げる根拠が作りにくい)
  • もともと提示額が相場より高い場合

通りにくい場合でも、確認すること自体は無駄になりません。
「これ以上は難しいです」と言われたら、そこで納得して決めればいいだけです。


自分で言い出しにくい人へ

ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。

年収の交渉は、多くの人が苦手です。
特に、次のような気持ちがあると、言い出せません。

  • 内定をもらった立場で、条件の話をするのが申し訳ない
  • お金の話をすると、印象が悪くなりそう
  • 断られたら気まずい
  • そもそも、いくらが妥当なのか分からない

これは弱さではありません。
日本の職場では、給料の話を自分から切り出す機会がほとんどないので、慣れていなくて当然です。

エージェント経由なら、代わりに言ってもらえます

転職エージェントを使うと、条件の交渉を担当者が代行します。

これは、単に「代わりに言ってくれる」というだけではありません。
やり取りの形が変わります。

  • あなたが直接お金の話をしなくて済む(会社との関係が悪くならない)
  • 担当者は相場を知っている(いくらが妥当か分かる)
  • 断られたときも、気まずくならない(あなたと会社が直接やり合っていないため)
  • 入社日や勤務条件も、一緒に交渉できる

そして、エージェント側にも交渉する動機があります。

あなたの年収が上がれば、企業がエージェントに払う手数料も増える仕組みだからです。

この点では、利害が一致します。

ただし、そのぶん注意も必要です。
年収が高い求人を勧められる傾向があるからです。

年収より働きやすさを優先したいなら、それを最初に伝えてください。

「年収より、残業時間を優先したいです。月◯時間以内であれば、金額は相場程度で構いません。」

この一言があるかないかで、紹介される求人が変わります。

経歴に自信がない20代なら、既卒・フリーター・中退・高卒も対象にしている第二新卒エージェントneoが使いやすいサービスです。

条件の交渉や入社日の調整も、担当者が対応します。

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年収が下がる転職を、どう考えるか

当サイトの読者には、この話のほうが現実的かもしれません。

未経験の分野に移る。
夜勤をやめる。
残業の少ない職場に移る。

これらを選ぶと、年収は下がることがあります。

でも、それが損とは限りません。

時間あたりで計算してみる

たとえば、こういうケースです。

  • 今:年収400万円、月の残業60時間
  • 転職後:年収360万円、月の残業10時間

年収は40万円下がります。
でも、月に50時間、年間で600時間の自由な時間が戻ります。

時給に直すと、実は上がっていることがあります。

そして何より、体を壊さずに済みます。

下がった分が、いつ戻るかを聞く

未経験で入る場合、一時的に下がるのは自然なことです。
大事なのは、何年で戻る見込みか。

「入社後、何年くらいでどのくらいの水準になる方が多いですか。」 「昇給は、何を基準に決まりますか。」

この2つを聞いてください。

数年で戻るなら、それは投資です。
戻る見込みがないなら、業界の給与水準そのものを確認する必要があります。

健康を金額に換算してみる

体を壊して働けなくなれば、収入はゼロになります。

そして、回復には時間がかかります。

眠れない、朝起き上がれない、動悸がするといった状態が続いているなら、年収の話より先に心療内科や精神科を受診してください。

診断がつけば、傷病手当金という制度が使える場合もあります。

年収を守るために健康を差し出すのは、順番が逆です。


交渉するときの、具体的な伝え方

エージェント経由でも、自分で伝える場合でも、根拠があると通りやすくなります。

使える根拠

  • ① 前職の年収
    • 最も分かりやすい根拠です。源泉徴収票などで証明できます。
    • 「前職と同水準を希望します」は、無理のない要望です。
  • ② 同じ職種の相場
    • 求人を複数見て、相場を把握しておきます。
    • 「同じ職種の求人を見ると、◯◯万円程度が多いようです」という形で伝えられます。
  • ③ 資格や経験
    • 資格手当がつく場合や、その職種で直接活きる経験がある場合は、根拠になります。
  • ④ 他社の提示額
    • 他社から内定が出ている場合、事実として伝えることはできます。
    • ただし「他社はもっと高いので上げてください」という言い方は、相手にいい印象を与えません。
    • 「他社からも内定をいただいており、条件面で検討しています」程度に留めるほうが無難です。

避けたほうがいい伝え方

  • 生活の事情だけを理由にする
    • (「家賃が高いので」など。会社にとっては判断材料になりません)
  • 一方的に金額だけ要求する
    • (根拠がないと、応じにくくなります)
  • 入社を人質にする
    • (「上げないなら行きません」は、通っても後味が悪くなります)

交渉は、相手を負かす作業ではありません。

お互いが納得できる点を探す話し合いです。


交渉が通らなかったときの考え方

断られることもあります。 そのときは、次の3つを確認してください。

  • ① 他の条件で調整できないか
    • 金額が動かなくても、入社日、勤務地、勤務時間、休日などで調整できることがあります。
    • 「金額が難しいのであれば、◯◯についてご相談できますか」と聞いてみる価値はあります。
  • ② 昇給の見込みはあるか
    • 「入社後、どのタイミングで見直しの機会がありますか」と聞いておきます。
    • 1年後に評価があるなら、そこで挽回できる可能性があります。
  • ③ その金額で、生活が成り立つか
    • ここが最も大事です。感情ではなく、数字で判断してください。
      家賃、生活費、通勤費。成り立たないなら、断ることも正当な選択です。

交渉が通らなかったからといって、入社を断ってはいけないということはありません。


職種別|年収の見方が変わるところ

働く分野によって、確認すべき点が変わります。

看護・介護など、シフト勤務の場合

夜勤手当が、年収に大きく影響します。

夜勤を月4回やるかやらないかで、年収は数十万円変わることがあります。
だから、「夜勤をやめたい」という希望は、そのまま年収の減少につながります。

ここで大事なのは、減る金額を先に把握しておくことです。

「夜勤手当は1回いくらでしょうか。月に何回程度入る想定ですか。」

この金額が分かれば、夜勤なしにした場合の年収が計算できます。
感覚で「下がりそう」と思うより、数字で見たほうが判断しやすくなります。

そして、この分野には収入を調整する方法があります。

常勤だけでなく、派遣や単発という働き方があるからです。
派遣は時給が高めに設定されることが多く、フルタイムで働けば常勤と大きく変わらない場合もあります。

「夜勤をやめると生活できない」と思っている方は、常勤以外の選択肢も含めて相談してみる価値があります。

単発・派遣を実際に扱っているサービスがどう動くのかは、夜勤・単発・派遣という働き方の実態で解説しています。

営業職の場合

固定給と歩合の割合を確認してください。

「年収500万円可能」と書いてあっても、固定給が250万円で残りが歩合、という場合があります。

この場合、成績によって収入が大きく変動します。

「固定給はいくらで、インセンティブはどのくらいの方が受け取っていますか。」

平均ではなく、「どのくらいの人が受け取っているか」を聞くのがポイントです。
一部の人だけが高額を得ている場合、平均額は実態を表しません。

未経験で異業種に移る場合

一時的に下がることは、ほぼ避けられません。

大事なのは前にも書いたとおり、何年で戻るかです。
そしてもうひとつ、その業界の給料の相場そのものを確認してください。

業界の水準が前職より低い場合、何年経っても戻らないことがあります。

これはあなたの力の問題ではなく、業界そのものの仕組みです。
移る前に知っておくべき情報です。

そもそも未経験でどこに移るかという設計そのものは、未経験から異業種に移るときの設計にまとめています。

年収の話と移り先の話は、セットで考えたほうが判断を間違えません。


在職中のうちに、確認しておくこと

転職を考え始めたら、今の職場の数字を整理しておいてください。
交渉の根拠になります。

  • ① 源泉徴収票を手元に置く
    • 前年の年収が、正確な数字で分かります。
      これが交渉の一番強い根拠です。
      年末や退職時にもらえます。
  • ② 給与明細で、手当の内訳を確認する
    • 基本給がいくらで、手当がいくらか。
      新しい職場でなくなる手当があるかどうかを判断するために必要です。
  • ③ 賞与の実績を、直近2〜3年分メモしておく
    • 「規定は4ヶ月分だが、実際は3.5ヶ月だった」といった情報です。
      新しい職場と比べるときの基準になります。
  • ④ 残業時間の実績を把握する
    • 月に何時間残業しているか。
      時間あたりの収入を計算するために必要です。

この4つが手元にあれば、比較も交渉もしやすくなります。

そして、辞めた後だと集めにくくなる情報もあるので、在職中に整理しておくのがおすすめです。

在職中に動く場合の全体の段取りは、内定から退職交渉までの時系列設計で整理しています。


【詳しく知りたい方へ】固定残業代の、法律の話

ここからは、少し込み入った話になります。

今すぐ必要ない方は、読み飛ばして「よくある質問」へ進んでください。
求人票の固定残業代に引っかかりを感じたときに、また戻ってきてもらえれば十分です。

固定残業代には、有効になるための条件があります

固定残業代は、それ自体が違法な仕組みではありません。
ただし、有効と認められるための条件があります。

裁判例で整理されてきた考え方は、おおむね次の3点です。

  1. 給料の部分と、残業代の部分が、分けて書いてあること
    「月給28万円(固定残業代を含む)」だけでは、いくらが残業代なのか分かりません。金額と時間数が示されている必要があります。
  2. その手当が、本当に残業の分として払われていること
    名前が「営業手当」でも、実態が残業の対価でなければ、固定残業代とは認められません。
  3. 固定残業代が、法律どおりに計算した金額より少なくないこと
    そして、設定時間を超えた分は、別途支払わなければなりません。

とくに③は重要です。

「45時間分の固定残業代が入っているから、何時間残業しても同じ」という運用は、法律上認められていません。
45時間を超えた分は、追加で支払われる必要があります。

参考:最高裁 平成30年7月19日判決(日本ケミカル事件)ほか

※個別の事案が有効かどうかは、契約書や実際の運用によって判断されます。
ここでは一般的な考え方として整理しています。

求人票には、3つの記載が必要です

もうひとつ、応募の段階で使える基準があります。

厚生労働省の指針では、固定残業代を採用している場合、募集要項や求人票に次の3点をすべて明示するよう求められています。

  1. 固定残業代を除いた基本給の額
  2. 固定残業代の金額と、それが何時間分に当たるか
  3. その時間を超えた分の割増賃金は、追加で支給すること

記載例はこうなります。

月給28万円
※基本給22万円、固定残業代6万円(時間外労働45時間分)を含む
※45時間を超える時間外労働分は追加で支給

この3点が揃っていない求人票を見たときに、「違法だ」と決めつける必要はありません。単に記載が不十分なだけの場合もあります。

ただ、確認すべきポイントが1つ増えたことは確かです。

「固定残業代は何時間分でしょうか。その時間を超えた場合は、別途支払われますか。」

この質問は、条件確認として完全に正当です。
むしろ、ここに明確に答えられない会社のほうが気になります。

参考:厚生労働省「固定残業代を賃金に含める場合は、必ずその内訳を明示してください」(若者雇用促進法に基づく指針)

『管理職だから残業代なし』は、正しいのか

提示条件に「役職者のため、残業代の支給はありません」と書かれていることがあります。

法律には「管理監督者」という立場があり、その人には労働時間や休日のルールが当てはまりません。

ただし、これに当たるかどうかは役職名ではなく、実態で判断されます。

一般に、次のような点が見られます。

  • 経営に関わる立場で、労働時間を自分の裁量で決められるか
  • 採用や人事について、実質的な権限があるか
  • 地位にふさわしい待遇(基本給や手当)を受けているか

肩書きが「店長」「マネージャー」でも、シフトに縛られ、権限もないという場合は、これに当たらないと判断されることがあります。

そして大事なのが、管理監督者に当てはまる場合でも、夜10時〜朝5時に働いた分の上乗せは払われるという点です。ここだけは例外がありません。

入社前の段階で争う話ではありませんが、「管理職だから残業代はゼロ」という説明を受けたら、権限と待遇がそれに見合っているかを確認する材料にはなります。

その固定残業代、金額は足りているか(検算のしかた)

ここからは、自分で電卓を叩きたい方向けです。

「そこまではいい」という方は、次の見出しまで飛ばしてください。
面接で「固定残業代は何時間分ですか」と聞くだけでも、十分に役に立ちます。

提示された固定残業代が、その時間数に対して足りているかどうかは、自分で計算できます。

手順は3つです。

  • 【手順1】1ヶ月の平均所定労働時間を出す
    • (365日 − 年間休日)× 1日の所定労働時間 ÷ 12
    • 例:年間休日120日、1日8時間 →(365−120)×8÷12 = 約163時間
  • 【手順2】1時間あたりの賃金を出す
    • 固定残業代を除いた月給 ÷ 平均所定労働時間
    • 例:22万円 ÷ 163時間 = 約1,350円
  • 【手順3】必要な固定残業代を出す
    • 1時間あたりの賃金 × 1.25 × 固定残業代の時間数
    • 例:1,350円 × 1.25 × 45時間 = 約75,900円

先ほどの例だと、提示されている固定残業代は6万円でした。
45時間分としては、計算上およそ1万5千円ほど足りない計算になります。

この場合、聞くべきことははっきりします。

「固定残業代6万円は、何時間分として設定されていますか。」

時間数と金額が合っていない場合、時間数の設定が違うか、計算の基礎が違うか、どちらかです。
悪意がなくても、単に記載が古いままということもあります。

なお、残業代の計算に入れなくていい手当は、法律で決まっています。

外せるのは、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金の7つだけです(労働基準法37条5項、同法施行規則21条)。

しかも、名前が「家族手当」なら自動的に外せるわけではありません。
扶養人数に関係なく全員一律で支給しているなら、それは実質的に基本給の一部なので、計算の基礎に含めることになります。

つまり、役職手当や資格手当は計算に入るので、それらがある人は残業代の単価も上がる、ということです。

ここまで確認できる人は、ほとんどいません。
だから、聞くだけで「この人はちゃんと見ている」という印象になります。

それ自体が、交渉の下地になります。

「45時間分」という数字が意味していること

求人票で見かける固定残業代の時間数には、目安があります。

会社が社員に残業させるには「36協定」という取り決めが必要で、残業は原則、月45時間・年360時間までと決まっています。

例外を認める取り決めをしても、上限はあります。
年720時間まで/1ヶ月なら100時間未満/数ヶ月ならその平均が80時間以内/月45時間を超えられるのは年6回まで。

つまり「固定残業代45時間分」は、法律上の原則の上限いっぱいを、あらかじめ前提にした設計だということです。

時間数を、1日あたりに直すと分かりやすくなります(月20日勤務で計算)。

固定残業代の時間数1日あたり(月20日勤務)実態のイメージ
10時間分30分ほぼ定時。繁忙日のみ
20時間分1時間週に数回、1時間程度
30時間分1時間30分残業が日常にある
45時間分2時間15分毎日2時間超が前提
60時間分3時間恒常的な長時間労働。超過分は50%以上の割増

「45時間分」は、毎日2時間強の残業が常態化している前提で組まれた金額です。

これは「その会社がブラックだ」という意味ではありません。
忙しい時期がはっきりしている業種では、年間でならすために設定していることもあります。

ただ、面接でこう聞く根拠にはなります。

「固定残業代が45時間分ということは、それに近い残業を想定されているということでしょうか。実際の平均はどのくらいですか。」

設定時間と実態が大きく違うなら、その理由を聞けばいい。
噛み合った答えが返ってくるかどうかが、判断材料になります。


よくある質問

Q. 年収交渉をすると、内定が取り消されませんか?
常識的な範囲の相談で内定が取り消されることは、通常ありません。
ただし、一方的で強い要求を繰り返すと、印象が悪くなる可能性はあります。
相談の形で伝えるのが基本です。

Q. 未経験で転職する場合、交渉できますか?
難しいことが多いです。
実績がないため、上げる根拠を作りにくいからです。
ただし、前職の経験が活きる部分があれば、それを根拠にできます。

Q. 前職の年収を、多めに伝えてもいいですか?
やめてください。
源泉徴収票の提出を求められることがあり、事実と違うと分かると信頼を失います。
最悪の場合、内定取り消しの理由になり得ます。

Q. 提示額が相場より低い気がします。
まず、同じ職種の求人を複数見て相場を確認してください。
そのうえで、根拠として伝えられます。
エージェント経由なら、担当者が相場を教えてくれます。

Q. 交渉のタイミングを逃してしまいました。
承諾前なら、まだ間に合います。
「承諾の前に、条件について確認させてください」と伝えてください。
承諾後は難しくなります。

Q. 年収が下がる転職は、避けたほうがいいですか?
何を優先するかによります。
残業が減る、夜勤がなくなる、体調が戻る——これらは金額に表れませんが、大きな価値があります。
時間あたりで計算してみてください。

Q. 賞与の実績を聞くのは、失礼ではありませんか?
失礼ではありません。
生活の計画に直結する情報です。
答えられない会社のほうが、むしろ気になります。

Q. エージェントに交渉を任せると、無理な要求をされませんか?
希望を最初に伝えておけば大丈夫です。
「年収より働きやすさを優先したい」と言えば、その方向で動いてもらえます。
伝えないと、一般的な優先順位(=年収)で提案されます。

Q. 入社後に、条件が違うと分かったら?
まず会社に確認してください。
書面と実際が違う場合は、改善を求められます。
解決しない場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーなどに相談できます。

Q. 手取りがいくらになるか知りたいのですが。
額面から、社会保険料と税金が引かれます。
だいたい8割くらいが手取りになることが多いです。ただし、家族の状況や住んでいる地域によって変わります。
正確な金額は、内定後に会社に確認してください。

Q. 転職して、住民税が高くなることはありますか?
住民税は前の年の収入をもとに計算されます。
転職した年は、前職の収入に対する住民税を払うことになるので、収入が下がった年ほど負担を重く感じることがあります。
仕組みを知っておくと、慌てずに済みます。

Q. 交渉した内容は、書面に残してもらえますか?
残してもらってください。
口頭で合意しても、記録がないと後で食い違うことがあります。
労働条件が書かれた書面に、交渉した内容が反映されているかを必ず確認してください。

Q. 「残業代込みで年収400万円」と言われました。これは違法ですか?
それだけでは違法とは言えません。
固定残業代の金額と時間数が示されていて、超えた分が追加で支払われるなら、制度自体は認められています。
確認すべきは「何時間分か」「超えた分は払われるか」の2点です。
この2つに明確に答えられない場合は、書面で確認してください。

Q. 固定残業代45時間分は、多いですか?
36協定の原則の上限が月45時間なので、その上限いっぱいを前提にした設計だといえます。1日あたりに直すと2時間強です。
多いか少ないかより、その会社の実際の残業時間が何時間かを聞いてください。
実態が20時間なら、使わない25時間分を前提に働くことになります。

Q. 固定残業代を減らして、基本給を上げてもらえますか?
総額が変わらない範囲であれば、相談する価値はあります。
基本給は昇給・賞与・退職金の算定基礎になることが多いため、同じ年収でも基本給が高いほうが数年後の差は開きます。
ただし、給与テーブルの構造上、動かせない会社も多いです。
「難しい」と言われたら、そこは受け入れて別の条件で調整するほうが現実的です。

Q. 手当が増えると、残業代の単価も上がりますか?
上がる場合があります。
割増賃金の計算の基礎から外せる手当は、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時の賃金・1ヶ月を超える期間ごとの賃金の7つに限られています(労働基準法施行規則21条)。
つまり、役職手当や資格手当は基礎に含まれるので、その分だけ残業代の単価も上がることになります。

Q. みなし残業と裁量労働制は、同じものですか?
別の制度です。
固定残業代(みなし残業)は「一定時間分の残業代を前払いする」仕組みで、超えた分は別途支払われます。
裁量労働制は「実際の労働時間にかかわらず、決められた時間働いたとみなす」制度で、対象となる業務が法令で限定されています。
どちらの場合も、深夜労働と休日労働の割増は別に発生します。
求人票に「裁量労働制」とあったら、対象業務と、みなし労働時間が何時間かを確認してください。

※本記事は一般的な法令の取り扱いを整理したものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。
実際にトラブルが生じている場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナー、労働基準監督署、または弁護士にご相談ください。


まとめ|上げる前に、中身を確かめる

整理します。

  • 提示額の中身を先に確認する。固定残業代、賞与の実績、手当
  • 残業代そのものは交渉できない。法律で割増率が決まっているから
  • 交渉するのは基本給。固定残業代を増やす形の「年収アップ」は、残業前提が増えているだけのことがある
  • 固定残業代は「何時間分か」「超えた分は払われるか」の2点で判断する
  • 年収は月給ではなく、年間の見込み額で比べる。基本給の比率も見る
  • 交渉できるのは、基本的に内定が出た後。承諾後は難しい
  • 返事の期限は交渉できる。迷ったら即答しない
  • 自分で言いにくいなら、エージェントに任せられる
  • 年収が下がっても、時間あたりで見ると損とは限らない
  • 健康を差し出して年収を守るのは、順番が逆

年収の交渉というと、駆け引きのように聞こえます。

でも実際にやることは、確認と相談です。

そして、当サイトの読者に一番お伝えしたいのは、「金額より先に、続けられるかどうかを見てください」ということです。

続けられなければ、その年収は手に入りません。

どのサービスが自分に合うかは、20代・未経験の転職エージェント比較で整理しています。


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Geldライター:Kasai
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ストレス発散道場 編集部|人事・採用経験のある経営者ライター
仕事がつらいのは、あなたが甘いからではありません。 書いているのは、上場企業グループで法人営業と人事・採用(研修設計/採用面接/労務・リスク管理)を経験し、現在は会社経営者として組織を率いている人間です。「辞めたい」と切り出す側と、それを受ける側。その両方の席に座ってきました。 ストレス発散道場(運営:株式会社Geld)では、退職・転職・働き方から、眠りや運動などのセルフケアまでを発信しています。退職代行や労働法の情報は、民法・労働基準法などの条文や公的機関の一次情報にあたり、正確さを最優先に。読み終えたとき、肩の力が少し抜けている——そんな記事を目指しています。
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